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我が町工場で先日 定年を迎えられた方のお話しです。
彼は長年この町工場で(衛生的にも体力的にも)他に誰も
手を出さなかった超3Kの作業を担当してきました。
一部の見方では 彼には他に出来る適性の作業が
無かったという背景もあったらしいが、
私はそれを知らない。実践風景

そんな彼の作業が、移り行く環境問題の大きな波と
そしてこの町工場固有の事情等が要因となって
突然消えてしまいました。
その後、彼は定年を迎えるまでの数年間、
解雇という訳にもゆかず、しかし適性の合う作業も
少ないという事で雇用側も様々な苦慮を重ねて
下さりながら先日の定年を迎えたという事であります。
しかしながら、
現在のこの国の制度ではサラリーマンと言えども
定年後 直ちに年金で生活が出来るほど甘くは無い。
当然、年金を受給しながら一方では
嘱託契約を結びその労働時間を調整しながら
生活するというのが現実であります。
そして彼が会社側から与えられた作業というのが
我がMC工場のプラノミラーでの「ギロ刃」の加工であります。
彼は若い頃から数値による加工という作業の経験を
持たない。
また時代の不幸なのだろうか、加減乗除もままならない。
その彼を指導するのは我が町工場のマーチさんであります。
ここ 数ヶ月、私は彼らの所作をじっと見詰めてきました。
それは正に教える側と教えられる側との死闘
とも言えるものでした。

同じ事を毎日何度も繰り返し教えるマーチさん。
一方はその持ち前の性格なのか、或いは過去において
人生の選択をしなければ先へは進めないような厳しい
状況に身を置いたことが無いのか、そこはよく解りませんが、
「あ~ もうワシは馬鹿だで こんな事は出来んワッ
もう あんたから 社長に あの人はダメだと言ってくれんかなぁ!」
といった具合に直ぐにキレる。
それでもマーチさんは
「これは自分に与えられた仕事だからやりますよ」
と私に言ってくれる。
私は複雑な思いでこの数ヶ月間黙って来ましたが、
或る時をきっかけにして(やはり言うべき事は言った方が良い)
と思い私はその定年者に言いました。
「今、貴方は こうして無条件で嘱託契約を結んでいるわけでは
ない 貴方にはこのプラノミラーをマスターするしか選択肢は
ないんです それを厳しいと思わないで下さい
そして誰でも何時かは今の貴方と同じ立場になります
それは私も同じです
しかし貴方の場合は会社の方から
”これをやってくれたらこの会社で、慣れ親しんだこの
工場で働けるんです お願いします”と言われているんですよ
それはものすごく恵まれているんですよ。
どうか それを解ってください」と。
その後の彼はゆっくりとですが加工手順を覚えてきて、
もう半分くらいは任せられる程になりました。

この事をよく考えるとこのような状況は誰の身に
降りかかってもおかしくはない。
社会福祉事情の悪化に伴って、定年者の再雇用における
諸事情も大きく変化してきた昨今。
多分 我々の世代が定年を迎える時代には
今のようなままの年金も無いだろう。
また、日本の平均寿命はこれから下がっていく筈である。
その背景には後期高齢者医療の実態を少しでも
見れば自ずと解る事であります。
受けたい医療が受けられない、投薬に関しても
基本的にはジェネリック医薬品が大勢を占めるようになる。
当然、最新の医薬品は使われ難いという時代が待っている。
介護の世界はどうだろうか。救急医療の実態は?
出産したくても産科自体が減少している事に加え、
救急搬送の拒否も現実に起きている。
そして頼みの綱の年金は崩壊している。
国の借金は世界一であり、金利は一向に上がらない。
さらに現政権発足時の公約だったと思いますが?
拉致被害者もあれから帰ってこないし
油田問題も北方領土問題も解決しない。
ついでに先日の内閣支持率では一部20%割れ?
後期高齢医療制度に到っては17%の国民しか
評価していないという。
しかもその17%の方達を官房長官は「賢明なる国民」
と言ってのけたんだから、ねぇ。
じゃぁ 俺はアホだな。
だけどホント エエかぁ?この国?
話が脱線しましたが、
要するにそんな時代の真っ只中にいる我々の未来を思う時、
私はとてつもなく大きな不安に掻き立てられるという事です。
私は一人の技能者として僅か程度の自信とそれを裏付ける
経験を持っています。
しかし、これから先の時代においては そんな物が一体
何の役に立つのだろう?とさえ思う。
今回の我が町工場での一人の定年劇は
そんな激動の時代の幕開けなのかもしれない。
もし、そのような劣悪な時代が到来したとして、
我々技能者が行きぬく為には何をすれば良いのか。
親から引き継ぐ会社が有ればまだ良いだろう。
それを継続 発展させれば活路が見出せる可能性は高い。
(僻んでいるわけでは有りません)
しかしこの身一つのサラリーマンにとっては誠に厳しい
状況になると思う。
だから若き技能者達よ、今 必死に訓練して頂きたい。
どんなに時代が変わっても「本物」だけは残り得るだろうから。
今、必要が無いように思える事であっても
時間を惜しむ事無くそれを体得していって頂きたい。
私もまだまだ修業の身だから一緒になって高く高く技能を
身に付けていこうではありませんか。

 ~私のゴールデンウィークにおける随想~

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» 町工場@日々徒然
プラノミラーをその方が担当するという事は
MCヨッチャン様が責任者である部署の新人さん?

読んでて悲しくなりますが、こればっかりは
本人のやる気次第ですね
しかしまぁ、拒絶反応を示してる先輩に根気良く
教え続けてるマーチさんに頭が下がりますし
そこまでしてでも、その方に温情をかけて
居場所を与えた会社側とヨッチャン様の厳しさの
中にも温っかみのあるその方への意見

見守ってくれてる人達の気持に応えるためにも
頑張って頂きたいです
匿名希望 2008/05/05(Mon)17:53:09 編集
» 橋を架けてあげることしか出来ない
匿名希望様
最近 何度かおいで下さっている方でしょうか?
確かに還暦を迎えてから全く畑違いの仕事を覚えるという事は並大抵の事ではないでしょう。
でも生きてゆく事ってそういう事なんだと、
簡単にして誰もお金はくれないという事なんだと、
私は彼を通して学びました。
私たちに出来る事は彼が渡る橋を架けてあげる事
しかないんです。
それを渡るのは彼自身です。
ただ、迷っているのなら「渡りなさい」と言ってあげるだけです。
これが冷たいと思われるか、温かいと思われるかは
私にはわかりませんが。
MCヨッチャン 2008/05/05(Mon)19:24:30 編集
» 人生さまざまですね。
MCヨッチャン様

人生さまざまですね、昨年定年ということは
私の師匠と同じ世代です。

私の師匠は、昨年定年を迎え今では家の畑仕事などをやっているようですが、定年前に”一緒に工場
やらないですか?”とか私から誘いましたが
断られました。
というのも師匠自信サラリーマンの出世街道から外された人だったのです。
師匠曰く、師匠より年上の人 つまり訓練校の先輩
で出世していたのは1期~5・6期の人たちで
師匠は8期でした。
(師匠の同期の人でも出世する人はいました)
しかし、師匠はごみの分別やら蛍光灯の交換やらを
会社側からやらされていましたが、明るく前向きに
仕事をこなしていました。
私自身、師匠のそんな姿など見たくないのですが
これが現実です。
大きい会社なんて、偉い人におべっか使って
自分も偉くなり挙句の果てには下請けに天下り!
そんなの、生きていてなにも楽しくない。

話が反れましたが、ヨッチャン様のところの定年の
方は、まがりにも覚えようとする気があるのですから、これからの人生を有意義に考えてもらいたいです。
ちなみに、わが工場でもブラノミラーの職人が、
嘱託社員でいます。
彼に、学ぶことは多いです。今の親方が認める数少ない職人です。
また、自分のブログでも書いてあるこの道に入る
きっかけとなった伯父伯母ですが、伯父は技能訓練校を出ているのですが違う道を選び、朝から深夜まで、働いています。現在既に定年を迎えまた畑の違うところで働いています。
この伯父の平均労働時間は12時間超えです。
60も過ぎ体もきついのだけれども、とにかく働いています。
(やっぱり考え方の違いがあるのでしょう)
自分の事より人を気遣う人なので・・・

最後になりますが、ヨッチャン様の書いた、

”これから先の時代においては そんな物が一体
何の役に立つのだろう?”

私もそう感じています。 今は生きていく糧に
この技能を生かしていますが、この先不安な政情の中どうなる事やら確実に我々にもこのような問題が
出てくるのでしょう。
しかし、若い芽を枯れさててはいけないと思います。
物作りが見直されている昨今、我々の世代が、
新しい世代に残してやれることを、残していかなければ我々世代の生きた証にはならないと思います。

すいません、長々と書いてしまいました。

孝三郎 URL 2008/05/06(Tue)12:03:58 編集
» 人生とは?
よっちゃん様

ご無沙汰しています。

僕は今日から仕事ですが。
先月から新人さんにフライスを教えていますが
フライスの仕事を教えるのは、思ったより難しいです。マーチさんと同じで「毎日同じことの繰り返しで」彼は難しいと言います。
やっぱり本人のやる気ですかね、

これから先の時代においては そんな物が一体
何の役に立つのだろう?とさえ思う。ですが

本人には必要ないかも知れませんが
どんな時代になっても皆さんの技術は必要だと思います。




たむら~ URL 2008/05/06(Tue)12:53:35 編集
» 無いものが無い時代は既に
孝三郎様
正に人生さまざまですね。
ほんの一瞬のタイミングのズレで幸運を逃す人も
いれば
大きなチャンスが向うからやってくるという場合もあります。
でも、いつかの時代のように
「無いものが無い」という時代は既に終わっているんだろう
と思います。
そしてたまたまの幸運の人は「実力」と言うだろうし、何度もチャンスを逃した人は「こんな時代はイヤだ」
などと言うんでしょうね。
だから本物しか生き残れない時代が来たと思うのです。

たむら~様
そうですね。
いつの時代でも必要とされるような技能を
身に付ける為に我々世代は踏ん張っていますが、
>将来において 云々
と言いましたのは、どんな時代状況下においても
通用する技能を身に付けていれば食べる事には
困らないだろうという事ですが、
これからの時代を背負う若者達に望むことは
「我々世代を遥かに凌駕するほどの技量を
身につけて、そして我々先人達の技能を
理解して欲しいという事です。
そうすれば 最新の設備を使いこなす技量の上に
昔の確実な技能が理論的に乗っかっていくという事になります。
私の世代もそうしたように、貴方方のそのまた先の世代の若者達にもそうして欲しいと思います。
MCヨッチャン 2008/05/06(Tue)17:54:49 編集
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