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時は1980年を過ぎた頃
私は工業高校を卒業してパン屋さんに就職しました。
名古屋五輪が、まことしやかに囁かれていた頃であります。
その名古屋五輪は結局のところ机上の楼閣に終わってしまいましたが、
まぁ そんな時代であります。
私は工業高校を卒業してパン屋さんに就職しました。
名古屋五輪が、まことしやかに囁かれていた頃であります。
その名古屋五輪は結局のところ机上の楼閣に終わってしまいましたが、
まぁ そんな時代であります。
地元大手のその製パン工場へ入社した私が配属された部署は
営業五課。
いわゆる配達屋さんの部署であります。
朝は4時出社でトラックの荷台の中に各お店毎に仕分けされたものを
積み込んで出発となります。
午前中は配達で終わり、午後からは再び各お店をまわり注文を受け、
また現金契約のお店では集金も行いながら帰社します。
それから荷台にある空ケースをかたずけ、明日の準備をして帰宅。
元々飽きっぽい私はそんな生活に飽きてしまい、3ヶ月で辞め
それからから数ヶ月間、なにもしない日々が続きました。
そしてある時、繁華街裏の路地を歩いているところで、ある町工場の裏に
差し掛かりました。
そこには工場の裏の道をホウキで
一生懸命掃除している一人の老人が立っていました。
私と彼との運命的な出会いです。
西日がまだ強い9月の頃でした。
私がぶらぶらと下を向いて咥えタバコで両手はズボンのポケット
という出で立ちで歩いているとその老人が私に
「オイ お前 毎日この辺でうろついてるなぁ」
と声を掛けてきました。
「ちょっと こっち来て 中見てくか?」
私は何の気無しに
「ンッ? いいよ」
と答え、その老人の案内で、スレート壁の汚い工場の中へ入って行きました。
中にはグレーの作業服を着た人達がいて、
皆 作業に集中していました。
ある人は大きなノッポの機械で鉄板にドリルを当てていました。
また ある人は木で作られた自動車のバンパーのようなものが右側に
乗っかった機械で、鉄の塊をそれと同じような形に削っていました。
どの機械からも油の匂いと、そして油気が立ち上がっていて、
まるで私は別世界に来たような、そんな感触を肌で味わったのです。
それからその老人はざっと見ても十数台は有ろうかと思える
機械たちを指差して
「あれは旋盤といって丸い棒を削る機械 こっちは電気で鉄を
溶かしていく機械だ あれなんかはコンピューターを使って
いろんな形のものを作れるんだぞ すごいだろう」
と少々自慢げに説明しだしました。
私は只 目を丸くしてそれらを見ているだけです。
そんな私に一人の壮年が近づいて来ました。
「オイッ お前 こういうの好きか?」
「ウ~ン? そうですねぇ 面白そうですかねぇ」
「じゃぁ ちょっと やってみるか?」
「いや いいです」
私はそんな彼に対して そう答え、その場を去ろうとしましたが
ここでヤンチャな自分が頭を起こして
「でも 触ってみたい かな」と返事をしました。
「ほんなら こっち来て チョットこのハンドル回してみやぁ」
と彼が私に進めてくれたのは その
”自動車のバンパーのようなものが右側に
乗っかった、鉄の塊をそれと同じような形に削っている”
機械でした。
機械の前頭には「Makino」というエンブレムが付いている
その加工機は後に私の加工屋人生を大きく変えるきっかけに
なった機械でしたが、その時はなにも考える事も無く、
ただ 言われるままです。
「この両方のハンドルの左側を時計周りにゆっくり回してみて」
彼が言うそのハンドルとは一つのボックスに小さなハンドルが
左右に並んでいるもので、そこにはなにやら小さな字で
XとかYとかZ等が書いてありました。
彼に促されて私がその左側にあるハンドルをまわすと
鉄の塊が乗っかった部分がゆっくり動き出しました。
それもとてもスムーズに。
「おじさん、これでこんなのやってるの?」
「おう そうだよ」
「どうやってこんな形にするの?」
「これはなぁ 倣い って言ってよぉ この右側のモデルを倣って
こうやって削ってくんだぁ」
と身振り手振りで説明してくれました。
「ふーン でこの棒が撫でてくの?」
「そう スタイラスって言うんだけどよぉ、これもいろんな形や
大きさがあるもんで その時に考えて使うんだぁ」
そんなやりとりは不思議と自然な形で私を夢中に誘いました。
少し沈黙があって
「おい、 お前 仕事は何やっとるんだぁ」
老人は私に真顔で尋ねました。
「いや 別に なにもしとらんけど」
「ほんじゃぁ 明日から来るか?」
「ウ~ン 別に いいよ」
「ほんじゃぁ 履歴書持って 明日来い」
「ちょっと待って ちょっと考えるで」
その時 その老人は小さな四角い紙を一枚 私にくれました。
それは私が生涯で初めて貰った「名刺」であります。
そこには「株式会社〇〇精機工業所 代表取締役社長 TK・・・」
と書いてありました。
そうです 彼はこの町工場の社長だったのです。
「まぁ いつでもいいで 1回電話くれ」と老人。
「面白いぞ この仕事は いっぺん やってみろ」
とその壮年。
この壮年は後の私の加工屋人生の原点とも言える師匠となった
人物 GT氏その人でありました。
E
営業五課。
いわゆる配達屋さんの部署であります。
朝は4時出社でトラックの荷台の中に各お店毎に仕分けされたものを
積み込んで出発となります。
午前中は配達で終わり、午後からは再び各お店をまわり注文を受け、
また現金契約のお店では集金も行いながら帰社します。
それから荷台にある空ケースをかたずけ、明日の準備をして帰宅。
元々飽きっぽい私はそんな生活に飽きてしまい、3ヶ月で辞め
それからから数ヶ月間、なにもしない日々が続きました。
そしてある時、繁華街裏の路地を歩いているところで、ある町工場の裏に
差し掛かりました。
そこには工場の裏の道をホウキで
一生懸命掃除している一人の老人が立っていました。
私と彼との運命的な出会いです。
西日がまだ強い9月の頃でした。
私がぶらぶらと下を向いて咥えタバコで両手はズボンのポケット
という出で立ちで歩いているとその老人が私に
「オイ お前 毎日この辺でうろついてるなぁ」
と声を掛けてきました。
「ちょっと こっち来て 中見てくか?」
私は何の気無しに
「ンッ? いいよ」
と答え、その老人の案内で、スレート壁の汚い工場の中へ入って行きました。
中にはグレーの作業服を着た人達がいて、
皆 作業に集中していました。
ある人は大きなノッポの機械で鉄板にドリルを当てていました。
また ある人は木で作られた自動車のバンパーのようなものが右側に
乗っかった機械で、鉄の塊をそれと同じような形に削っていました。
どの機械からも油の匂いと、そして油気が立ち上がっていて、
まるで私は別世界に来たような、そんな感触を肌で味わったのです。
それからその老人はざっと見ても十数台は有ろうかと思える
機械たちを指差して
「あれは旋盤といって丸い棒を削る機械 こっちは電気で鉄を
溶かしていく機械だ あれなんかはコンピューターを使って
いろんな形のものを作れるんだぞ すごいだろう」
と少々自慢げに説明しだしました。
私は只 目を丸くしてそれらを見ているだけです。
そんな私に一人の壮年が近づいて来ました。
「オイッ お前 こういうの好きか?」
「ウ~ン? そうですねぇ 面白そうですかねぇ」
「じゃぁ ちょっと やってみるか?」
「いや いいです」
私はそんな彼に対して そう答え、その場を去ろうとしましたが
ここでヤンチャな自分が頭を起こして
「でも 触ってみたい かな」と返事をしました。
「ほんなら こっち来て チョットこのハンドル回してみやぁ」
と彼が私に進めてくれたのは その
”自動車のバンパーのようなものが右側に
乗っかった、鉄の塊をそれと同じような形に削っている”
機械でした。
機械の前頭には「Makino」というエンブレムが付いている
その加工機は後に私の加工屋人生を大きく変えるきっかけに
なった機械でしたが、その時はなにも考える事も無く、
ただ 言われるままです。
「この両方のハンドルの左側を時計周りにゆっくり回してみて」
彼が言うそのハンドルとは一つのボックスに小さなハンドルが
左右に並んでいるもので、そこにはなにやら小さな字で
XとかYとかZ等が書いてありました。
彼に促されて私がその左側にあるハンドルをまわすと
鉄の塊が乗っかった部分がゆっくり動き出しました。
それもとてもスムーズに。
「おじさん、これでこんなのやってるの?」
「おう そうだよ」
「どうやってこんな形にするの?」
「これはなぁ 倣い って言ってよぉ この右側のモデルを倣って
こうやって削ってくんだぁ」
と身振り手振りで説明してくれました。
「ふーン でこの棒が撫でてくの?」
「そう スタイラスって言うんだけどよぉ、これもいろんな形や
大きさがあるもんで その時に考えて使うんだぁ」
そんなやりとりは不思議と自然な形で私を夢中に誘いました。
少し沈黙があって
「おい、 お前 仕事は何やっとるんだぁ」
老人は私に真顔で尋ねました。
「いや 別に なにもしとらんけど」
「ほんじゃぁ 明日から来るか?」
「ウ~ン 別に いいよ」
「ほんじゃぁ 履歴書持って 明日来い」
「ちょっと待って ちょっと考えるで」
その時 その老人は小さな四角い紙を一枚 私にくれました。
それは私が生涯で初めて貰った「名刺」であります。
そこには「株式会社〇〇精機工業所 代表取締役社長 TK・・・」
と書いてありました。
そうです 彼はこの町工場の社長だったのです。
「まぁ いつでもいいで 1回電話くれ」と老人。
「面白いぞ この仕事は いっぺん やってみろ」
とその壮年。
この壮年は後の私の加工屋人生の原点とも言える師匠となった
人物 GT氏その人でありました。
E
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» 無題
ヨッチャンって文才ありますよねぇ
理工系の仕事してるのに頭は文系?
第一章~第一話という事でTHE虎舞竜のロードの様に第一章~第十三章まで
続きそうな予感
次が早く読みたい
どっかでは奥様との馴れ初めも出てくるんでしょうねぇ
楽しみです
寅は昭和37年4月生まれの45なんですけど
ヨッチャンはおいくつですか?
理工系の仕事してるのに頭は文系?
第一章~第一話という事でTHE虎舞竜のロードの様に第一章~第十三章まで
続きそうな予感
次が早く読みたい
どっかでは奥様との馴れ初めも出てくるんでしょうねぇ
楽しみです
寅は昭和37年4月生まれの45なんですけど
ヨッチャンはおいくつですか?
» そのうち 読むのも辛いような場面が
寅様 クッキングおやヂ様
とんでもないですよ。誤字脱字だらけでお恥ずかしいです。
このカテゴリーをスタートさせたのは
「如何にダメな人間でも可能性はある」という事を
伝えたいと思ったからです。
「僕は才能無い」とか「不器用」とかって 落ち込んでいないで
ほらっ やってごらん! てな事を伝えたいからなんですね。
この先、どういう展開になっていくのかは自分でもわかりません。
ただ、記憶を辿って書き綴っていこうと思っています。
たぶん、皆さん後々読むのも辛くなるような場面も出て来るかもですが、
飽きずにお付き合いください。
私は二回目の成人式を過ぎて五年目になりますよ。
ですから寅様とは同年代かもですね。
お互い「東京五輪と新幹線」の世代ですから
頑張って参りましょう。
とんでもないですよ。誤字脱字だらけでお恥ずかしいです。
このカテゴリーをスタートさせたのは
「如何にダメな人間でも可能性はある」という事を
伝えたいと思ったからです。
「僕は才能無い」とか「不器用」とかって 落ち込んでいないで
ほらっ やってごらん! てな事を伝えたいからなんですね。
この先、どういう展開になっていくのかは自分でもわかりません。
ただ、記憶を辿って書き綴っていこうと思っています。
たぶん、皆さん後々読むのも辛くなるような場面も出て来るかもですが、
飽きずにお付き合いください。
私は二回目の成人式を過ぎて五年目になりますよ。
ですから寅様とは同年代かもですね。
お互い「東京五輪と新幹線」の世代ですから
頑張って参りましょう。
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「半人前のマシニスト」
MCヨッチャンのBLOGへ
ご来訪下さり
有難うございます。
機械加工が本業のサラリーマンです。
50代半ばを過ぎて外構DIYに出逢い、その難しさや楽しさを書き残そうとの思いで記しています。
拙い記事ばかりですがご意見或いはご感想など頂戴できれば幸いです。
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ご来訪下さり
有難うございます。
機械加工が本業のサラリーマンです。
50代半ばを過ぎて外構DIYに出逢い、その難しさや楽しさを書き残そうとの思いで記しています。
拙い記事ばかりですがご意見或いはご感想など頂戴できれば幸いです。
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